やまに

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深山(miyama.)さん・白さと透明感が心地よい「うつくしいうつわ」を作るものづくりを見学に行ってきました

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Mar02

「白磁」製造のプロフェッショナル『深山(miyama.)』

透き通るような「白さ」と「透明感」、そして永く清潔に使い続けられるような「硬さ」が特徴の白磁の器。
そんな白磁の『うつくしいうつわ』を丁寧につくり続けている深山(miyama.)さんに工場見学に行って来ました。

今回は深山(miyama.)さんの器ができるまでの様子を『うつくしいうつわ』をつくる想いと共にレポートしてきます。

深山さんへおじゃまします

株式会社深山

今回おじゃまするのは岐阜県瑞浪市稲津町にある株式会社深山さん。
やまにの商品のなかでは、北欧ブルーシリーズを作ってもらっているメーカーさんです。

こちらは社長の松崎さん。
いつもありがとうございます😊

松崎さん(右)と小木曽(左)

『うつくしいうつわ』製造工程

深山さんでは、白磁の「うつくしいうつわ」を3つの工場で作っています。
今回はこの3つの工場を順番に見学させていただいたので、順を追ってご紹介します。

ここからは柴田さんにバトンタッチ!

いざ出発!(左:柴田さん、右:小木曽)

①圧力鋳込(あつりょくいこみ)工場

まず向かったのは圧力鋳込工場。
ここでは主に大皿やマグカップなどを作っています。

深山(miyama.) racca-ラッカ- 31cmポワソン深皿 ミモザイエロー やまに

例)racca-ラッカ- 31cmポワソン深皿

まずはこちらの機械で粘土に砂(ケイソウ)や水などを混ぜ泥にして、気泡を抜く脱泡作業をします。
粘土は気候などの影響を受ける素材なので、水分量などを変えて製造に適した状態に調整を行います。
気温や湿度の影響を受けるためコンディションは日々変化します。
それも作る製品によって粘度の調整が必要です。
数値化できない部分なので調整には職人の技が必要なところ。

その泥を石膏でできたこちらの型に入れ、圧力をかけ…

重ねて上から「ギュー」っと押している所

パカッと開くとお皿の形に。
これをひとつひとつ型から取り出します。

こちらはraccaの31cmポワソン浅皿

一言に型から取り出す、といっても、焼き上げていない器はまだやわらかく繊細。
ひとつひとつ手作業で丁寧に取り出します。

ひとつひとつていねいに

また、マグカップはここでハンドルを取り付けます。

こちらはマグカップのハンドルを付ける工程

型から取り出したままの生地(これはメタフィス)

上の写真のように型から取り出したままの状態ではバリなどが残っています。
次の工程でスポンジでバリなどを取って生地を滑らかにしていきます。

こちらもraccaですね

バリ取りはスポンジの形状や硬さが大切。
スポンジは深山用にアレンジしたものを使用しています。

長年の経験が活かされた工夫。
より良いものをつくる為、毎日の工程の中で日々工夫を凝らしていく…。
手作業が多い深山さんだからこそできることなのです。

情熱的に説明をしてくれる柴田さんに、真剣に聞き入ってしまう小木曽

工場内にはたくさんの石膏型が保管されていました

②排泥鋳込(はいでいいこみ)工場

排泥鋳込みを行う工場

次は排泥鋳込を行う工場へ。
排泥鋳込とは↓のようなポットや徳利などを作るのに必要な手法です。

例)bico-ビコ- 片手急須

こちらは先程とちょっと違って、このような石膏の型に泥を流し込んだら・・・

気泡が入らないようゆっくり入れる

石膏が水分を吸い、泥との接触部分から少しずつ固まっていくのでそれを待ち、泥を流していきます。

斜めにして少しおいて泥を出し切る。

斜めにすることで器の底面が滑らかに均等になります。

この時間の調整も季節や気候によって適切な時間が変わります。
職人の技が光ります。

時間が経つと↑の写真のように内側に陶土が残り、ポットの形になるわけです。
その後乾燥させ、石膏の割型を空けて中身を取り出します。

だから「排泥」鋳込というんですね。
深山さんはこの排泥鋳込の技法にも長けていて、その技術力を活かしてティーポットや土瓶のほかにも、人形や仏具なども製造しているそう。

ポットは形状が複雑なので、例えば、取っ手、ボディ、注ぎ口、フタ、フタのつまみなど、パーツに分けて成形します。

これはフタのつまみ

これはbico ティーポットの注ぎ口パーツ

ひとつひとつ手作業で組み立てられていくポット

一通りの組み立てが完了したポット

最後に「素焼き」といって、800℃の窯で焼きビスケット程度の硬さに固めます。

窯の中に入れて嬉しそうな撮影係「U-ka」

③絵付け・施釉(せゆう)工場

最後に絵や模様を付けたり、釉薬(うわ薬)を塗る工場です。

【釉薬銅版ノ器】
深山さんは『銅版転写』という下絵付けが得意です。
繊細でありながら温かみのある風合いを生み出すことができる手法です。

1846年、銅版転写による下絵付けを日本で初めて制作した窯元『里泉焼(りせんやき)』。
すでに途絶えたその窯元と同じ場所で、想いを受け継ぎ1977年に深山さんは誕生しました。

「銅版転写」による下絵付けは
銅の板に絵柄を彫り、呉須(ごす)と呼ばれる絵付け用の顔料を浸して和紙に写し取り、和紙から器に再度写すことで絵柄を表現する技法です。

柄の顔料にガラス質を増やし全体は無釉で仕上げることで、柄は少し盛り上がり光沢を持って仕上がり無釉部分はしっとりとした仕上がりとなり、素材からくるコントラストを生み出します。

【完成品】「sasasa」シリーズ 2010年グッドデザイン賞を受賞

こちらが施釉の工程。

釉薬の入ったバケツにをテンポよく器を潜らせ、釉薬を付けていきます。
釉薬が均等に行き渡るよう、器を斜めにして振ってみたりベルトコンベアーに「ポンッ」と衝撃を加えながら置いたりと、職人さん技がとても巧みでした。

そして、最後に焼成(しょうせい)をします。

このようにできあがった器を綺麗に並べ・・・

大きな窯で焼き上げていきます。

深山さんでは器によって「酸化焼成」と「還元焼成」の2種類の方法を使い分けて焼いています。

―酸化焼成(さんかしょうせい)―

約1240度で焼成。
主に色釉(色の付いた釉薬)を焼いています。

例)深山 apple りんご豆小皿

―還元焼成(かんげんしょうせい)―

約1340度という先程より高温で焼成。
主に白の器を焼いています。

例)深山 cotori-コトリ- 17cmマルチボウル 白磁

「素材から」白磁を丁寧に仕上げる

深山さんの白磁土は長石や硅石というガラス質を多く含みます。

ガラス質を多く含むので「サクサク」の土

それを高温で焼き上げる事で素材が融け、透き通るほど白くなります。
これは素材がガラス化したためです。
ガラス化とは単に融けただけではなく、焼成前に陶土にあった目で見えないほどの小さな空洞に融けたガラス質が埋まり隙間なく焼き固まったという事です。
空洞が無くなると汚れつきが減り、洗い易くなり、清潔に使えるのです。
器が永く暮らしを共にするうつくしい道具となるよう、「まずは素材から」うつくしく仕上げるのです。

深山(miyama.) 7happy-七福- 土瓶 白磁 やまに

7happy-七福- 土瓶 白磁

時間と人の手を伝わり生まれるうつわ

私たちの器は産業に根付いています。
それは、できるだけ手に取り頂き易く、かつ良質な器を作り出したいと願うためです。
そのため毎日同じように工程を繰り返します、その瞬間だけをみれば人でも機械でも変わり無いように感じるかもしれません。
しかしながら、人の手は考えます。
同じ作業に見えても日々変化します。
些細な変化は継続することで大きな改善につながります。
受け継ぐということは決して平坦ではなく、積み重ねて高くなっていくことでもあります。
想いを受け継ぎ、ものづくりは積み重ねていく。
その時間は財産となります。

『うつくしいうつわ』をつくる想い

うつくしいうつわとは私たちのものづくりへの思いです。
歴史、地域、素材、技術と私たちは多くの大切なことに囲まれています。
その大切なことで私たちの器のおおよそは出来上がっています。
その最後に少しだけ私たちの思いを加えます。
”美しい器”ではなく”うつくしいうつわ”。
古代に中国大陸から伝わった漢字を基に自らのライフスタイルに合わせて平仮名を生み出し、そして、中国で生まれ景徳鎮で発展した白磁の製造技術が、朝鮮半島を経由し日本の有田に伝わった後に独自の器づくりを行った日本人の美意識のように、受け継がれたものを大切に、しかし、あくまで道具として現代の暮らしのための器を生み出す。
今を生きる人たちの喜びのために、過去に人が暮らしてきた時間にきちんと向き合い、その想いを受け継ぎ、丁寧にものを作り続ける。
それを想い続けることが私たちのものづくりてす。

引用:深山ウェブサイトより

確かに、同じ形をたくさん作ることは一見すると、機械でどんどん生産できそうだし、それは人でも機械でも結果は同じに思えます。
しかし気候や季節の影響をうける器の産業はただただ作るというわけにはいかず、日々、土と自然と人と向き合って作り上げていくものです。
細やかな最適化や工夫が散りばめられた深山さんの工場は、うつくしいうつわを作る想いが随所に感じられるものでした。

最後に記念撮影

長時間に渡り、丁寧に隅々まで工場を案内してくださった柴田さん。
本当にありがとうございました!

深山(miyama.)さんについてもっと知りたい方はコチラ/公式HP






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